2017 紺屋豊

博士論文題名: LC-TOFMSを用いた非誘導体化D-アミノ酸の高速一斉分析法の開発

論文内容の要旨

第一章 緒論

グリシンを除くタンパク質構成アミノ酸には鏡像体(L-体とD-体)が存在する.近年,様々な分野でD-アミノ酸が注目・研究されるようになったが,従来の分析法では誘導体化処理が必要であったり,鏡像体分離能やスループットが不十分といった問題があり,簡便かつ堅牢で高速・高分離能を有する分析法の開発が期待されている.そこで,既存の分析法のほぼ最高レベルと照らし合わせてクライテリアを設定し,新規分析法の開発に着手した.


第二章 タンパク質構成アミノ酸鏡像体の標準液を用いたD-アミノ酸分析法の開発(キラル分離のコンセプトの実証)

 キラルカラム(CROWNPAK CR-I)とLC-TOFMSTripleTOF 5600)を用い,タンパク質構成アミノ酸鏡像体の混合標準液を分析して,LC条件を検討した.通常用いられる逆相モードでは良好な結果は得られなかったが,HILICモードでの分析を試みたところ,分離が劇的に改善され,最終的に15分の一斉分析が可能となった(グリシンおよび二級アミンであるプロリンを除く).また,移動相の有機溶媒比率が増したことによりイオン化効率も改善され,ピーク強度は10倍以上に向上した. さらに,分離メカニズムに関して「3点窪み仮説」を提唱し,実験データと照らし合わせたところ,仮説は強く支持された.

 

第三章 食品中D-アミノ酸定量のための分析条件の最適化(実サンプルへの応用)

食品や生体試料中のD-アミノ酸を分析するために,前処理条件の検討,ならびに移動相の最適化を行った. その結果,分析時間は10分となり,検量線の直線性,ならびに良好な鏡像体ピークの分離能を備えていることが確認できた.その分析法を用いて食品(黒酢,キムチ,ヨーグルト)中D-アミノ酸の定量に成功した.

 

第四章 測定対象化合物の拡張

食品や生体試料中には,タンパク質構成アミノ酸以外のアミン類も多数存在するため,それらの同時分析を検討した.その結果,としてタンパク質構成アミノ酸を含め100種類以上のアミノ酸・アミン類の分析に成功した.各化合物のピーク形状や分離は,従来法に比べ良好であった.

 

5章 総括と展望

本研究において開発した分析法は当初掲げた3つの目標を大きく上回り,「①非誘導体化法でありながら、②18種類のタンパク質構成アミノ酸についてはアイソクラティック条件で10分以内の一斉分析が可能,③非タンパク質構成アミノ酸やその他のアミン類まで含めると20分以内に100種類以上の一斉分析が可能」であることを実証した.簡便かつ堅牢なアミノ酸・アミン類の分析が求められている幅広い分野において,本法が今後用いられていくことが期待される.

 

 

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