2016 田口歌織

超臨界流体クロマトグラフィーと液体クロマトグラフィーの融合に基づく新規分離法の構築

論文内容の要旨

第1章 緒論
SFC移動相の主成分である超臨界二酸化炭素の溶解性はn-hexaneと同程度あるため,低極性化合物に好適な分離手法だと考えられてきた.しかしながら,アルコールなどの極性Modifierを添加することで,その移動相極性が大きく変化する.そのため,SFCは幅広い化合物の一斉分析に適した分離技術であると言えるが,幅広い極性化合物が混在する複雑な試料の一斉分析を可能とする新たな分析手法は未だ示されていなかった.そこで本研究では,超臨界二酸化炭素の特性に着目し,幅広い化合物の一斉分析を可能とする技術の提案を目的とした.
第2章 SFC拡張による新規分離戦略の提案
SFCを用いて幅広い極性範囲と構造類似性を併せ持つステロイドを分析する場合,抱合体の有無やその種類ごとに異なるメソッドを使用する必要があった.そこで,SFCを用いた胆汁酸の一斉分析を試みるとともに,SFCとLCの融合による新規分離戦略を用いた性ステロイドの一斉分析を行った.その結果,胆汁酸一斉分析はSFCで達成された一方で,性ステロイドの分析では抱合体が溶出されず,遊離体との一斉分析達成が困難であった.そこで,SFC移動相の特性に着目し,SFCとLCを融合させることで,移動相にさらなる溶媒強度を付加し,より幅広い化合物の溶出と一斉分析に有用な新たな分離手法を試みた.その結果,全ての抱合体が溶出し遊離体との一斉分析が達成され,本章で提案された新規分離戦略が実現可能であることが示唆された.
第3章 Unified chromatography適用範囲の拡大
SFCとLCが融合したUnified chromatography(UC)では,移動相の溶媒強度可変幅が極めて大きく,低極性から高極性までの幅広い化合物群の一斉分析に有用であると考えられた.そこで極性範囲や化学特性が広いビタミンの一斉分析を試みたところ,これまで報告例のない脂溶性および水溶性ビタミン17種類のビタミンの一斉分析が達成された.さらにUCの親水性化合物に対する応用範囲を明らかにするため,高極性代謝物の分析を行った.その結果,112成分中77成分が検出される一方で,コレステロールなどの低極性代謝物の保持も確認できた.このことから,幅広い極性を有する代謝物が単一メソッドで保持・溶出可能であることが示され,本研究で提案したUCは,幅広い化合物の一斉分析に利用可能であることが示唆された.
第4章 総括
クロマトグラフィーは用いる移動相によって分類され区別されるため,本研究で提唱したSFCとLCの融合を可能にするUnified chromatography(UC)は既存概念からの脱却とSFCの可能性を示す新たなクロマトグラフィー技術であると言える.本研究では,移動相の溶媒強度における可変幅を大きく改善させるUCを提案した.また,この技術が幅広い化合物の一斉分析に有効な手法となる可能性を示すとともに,SFCの拡張性と有用性を実証した.SFCをベースとしたこの一連の手法は,移動相の物理状態によってこれまで隔てられていた分離技術を融合させ,分離分析の新たな展望を開く鍵になると考えられる.
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